この恋は少しずつしか進まない
透明のポリ袋に入れられた氷を頬に当てられると、ひんやりとして気持ちよかった。
別に手は正常に動くというのに、加島はずっと膝をついてくれていて。加島の手の熱さで袋の氷がどんどん溶けていく。
「加島はそうやって気まぐれに優しくするのよくないと思うよ」
きっと加島は私以外にもする。もちろん理沙ちゃんにも。
「別に優しくないすよ」
いつも見上げている加島の顔をこうして見下ろしていると、すごく変な感じ。
「優しくしとけば後が楽だって思ってやってる部分があるし、当たり障りなくしてれば相手はイヤな気持ちになんないでしょ。そうやって自分が得する選択しか選んでないんですよ、俺は」
加島はたぶん、気を遣いすぎる人なんだと思う。
周りの反応とか表情とかを読み取って、行動してきたとかがいっぱいあるんじゃないかって思った。
「よしよし」
「なにしてんすか」
「なにって撫でたくなったから」
これは別に理沙ちゃんに対抗したわけじゃない。