この恋は少しずつしか進まない
Chapter 5 揺らぐ想い
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次の日。カーテンの外では鳥たちが朝の挨拶をしていて、清々しいほどの青空が広がっていた。
「おはよう」
顔を洗いにキッチンの横を通った加島に声をかけた。
「え、あ、お、おはようございます?」
何故か加島は疑問形。
それもそのはず。だって学校がある日は決まって加島のほうが早く起きるから。
急に不安になったようで、すぐに時計を確認しに行っていたけど、決して加島が朝寝坊したわけじゃない。
「これ、加島のお弁当」
そう言って私のものより一回り大きなお弁当箱を差し出す。
「え、俺の?」
なんとなくずっとお弁当作りも加島に任せていたけど、今日は久しぶりに早起きして作った。
と、言っても加島みたいに手の込んだものは作れないから、ほとんど冷食を詰め合わせたものだけど。
「自分のぶんのついでだよ。やっぱりお昼ご飯は食べたほうがいいと思うし、残してもいいから今日はそれを持っていって」
私はそう言って自分のお弁当箱をぎゅっと包む。