この恋は少しずつしか進まない






それから学校に向かい、2時間目の休み時間。いつも教室の外に出ることは滅多になくて、美伽と机に張り付いたままお喋りをしていた。



「なにかあったでしょ?」

「え?」

今日の体育はマラソンだからだるい、なんて話をしていたはずなのに、急に美伽が聞いてきた。


「なにかって?」

「だって加島のこと微笑ましい顔で見つめてるから」


ギクッとして、私は慌てて目を逸らす。たしかに中庭では加島とその同級生たちがドッジボールをしていた。


「ほ、微笑ましくないよ。ただ靴の紐がほどけてコケた時にボールを当てられてるからバカだなって」

それにこの場所からだと絶妙に遊んでいる様子が視界に入るから、仕方なく見えてしまっただけ。


「やっぱり30%ぐらいにしておくべきだったんじゃない?」と、美伽が机に広げているお菓子を食べながら言った。


美伽の言うとおり、私は加島への接し方が明らかに変わった。


前はただの個性丸出しの変なヤツとしか思ってなかったけど、今は良いところがたくさんあることも知っている。

でもそれは、恋愛感情とは違う。


昨日は一瞬だけ加島に対してキュンとしてしまったけれど、そのあとはいつもどおりだったし、決してなかなか昨夜寝付けなかったのは……。

加島のことを考えていたわけじゃない、と今は言っておく。

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