この恋は少しずつしか進まない
そして授業が終わり、放課後になった。
次々とクラスメイトたちが帰宅していく中で、私も帰る準備をしていると、スマホにメッセージが届いた。
【今日は友達と遊んで帰るので少し遅くなります。でも晩ごはんまでには帰りますから。ちゃんと俺のリクエスト覚えてますよね?】
どうやら今朝言っていたコーン入りのシチューは本気だったようだ。
もしかして、今まで晩ごはんの準備をしてもらってたから放課後遊べなかったのかな。
加島のことを家政婦じゃないなんて言っておきながら、けっこう任せっきりだったし、これからは料理も当番制にしよう。
私も定期的に作らないと、元々下手くそだった腕前がもっと落ちてしまうし。
加島にメッセージを返しながら、私は校舎を出る。
いつもと違う道を歩いているのはスーパーに寄るため。シチューの元とコーンと、あとにんじんとじゃがいもも買わなくちゃ。
シチューだけだと物足りないから他にもなにか作る予定だけど、なにがいいかな。
そういえば加島って好きな食べ物はなんなんだろう。
私に作れるかは置いておくことにしても、好みの料理ぐらい聞いておけばよかった。
私が返したメッセージはまだ既読になってないけど、連続で送っても大丈夫かな。
「……伊織?」
――ドクン。
誰かから声をかけられて私は足を止める。