この恋は少しずつしか進まない



お姉ちゃんが彼氏の家に居座るようになってからは身の回りのことは全部自分でやってるから洗濯なんて朝飯前。別に面倒だとも思ってない。


「部屋の掃除も隅々までやりますから」

掃除なんて吸引力のある掃除機でぱぱっとやってしまえばすぐに綺麗になる。よって加島がいることで得することはなにもない。

そんな一ミリもなびかない私を見て加島は苦虫を噛み潰したような顔になった。

そしてふて腐れるようにぽつりと呟く。


「俺、こう見えて料理はなんでも作れるんですけどね……」

その言葉に私はピクリと反応した。


毎朝のお弁当は節約のために作っているけれど、ほとんど冷凍食品の詰め合わせだし、晩ごはんも二、三品しかないレパートリーをローテーションしているだけ。

そろそろ味にも飽きてきたし、料理の練習をしないととレシピはスマホで検索したりするけど、実際には作らない。

というか面倒くさくなって結局同じでいいやってなる。


「和洋中なんでもいけますし洗い物も全部やります。さらに食後のデザートとかもちゃちゃっと作れたりするんですけどね~」

この見せつけるような加島の顔。これは完全に私の心理を読まれている……。

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