亘さんは世渡り上手



「あの、俺……俺も、亘さんに俺のことを知ってもらいたい」



もう夏休みに入って、亘さんと会えなくなるかもしれない。今まで亘さんと過ごした日々を思い出せば……きっと自分の過去に、勝てる。



「だから、いつになるかわからないけど……いつか、絶対に、話すから」


『……はい、楽しみに待っています』



こんなに簡単に人の気持ちが変わるなんて。いや、こんなに簡単だったんだ。解決法なんて。


亘さんの嬉しそうな声に、俺も嬉しくなった。


……決めた。


――次、亘さんと会ったら伝えよう。


通話か終わった後、メモ帳を何気なくめくって他のページを見ると……。


明らかに俺のページだけ分量が違う。――なんて、さっきまで思っていたんだけど。そして、少し俺は亘さんから頭ひとつ抜けた友達なんじゃないかと、優越感に浸っていたんだけど。


――谷口のページも、俺と同じくらいの分量だった――。


『和泉くんのことが大好き』


『少しあまのじゃくなところがある』


しかも、俺よりも少し内容が濃いような気がする。


惨敗だ。


やっぱりこれは、男女の差なんだろうか……。やっぱり亘さんも、友達は同性の方がいいんだろうか……。


なぜか俺は、深く深く肩を落とした。

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