亘さんは世渡り上手
第三章『好きな人』
亘さんと沢渡さん
高橋は、今日もバカみたいに元気だ。
「理人、宇佐美! 今日は俺のために集まってくれてありがとーう!!」
うるさすぎるくらいに元気だ。
俺は頬杖を付きながら今日のファッションについて語ってくる高橋に相槌を打った。
そして、二人に気付かれないように小さくため息を吐く。
「集合時間、九時半って書いてあったから、早すぎるなとは思ってたけど……」
まさか作戦会議が始まるなんて、誰が思っただろうか。
朝のファミレスに男三人。一人は張り切り、一人は朝からカレーを食べ、一人は緊張している。
いや、別に緊張と言っても、合コンに対する緊張じゃない。
高橋と宇佐美に、いつ本当のことを話して連絡先を交換してもらおうかという緊張だ。
「お、おいっ、おまえらちゃんと聞けよ! 今回の合コンは、絶対に失敗できないんだから!」
「……あ、今日来る女の子の中の一人、俺の彼女だからその子以外を狙えよ」
「………………は?」
カレーを食べていた宇佐美が顔を上げてそう言うと、高橋はポカンと口を開いた後、隣に座る宇佐美の肩を掴んだ。
「おま……っ、宇佐美! お前彼女、いっ……!」
「え、うん。いるけど。俺の女の子の知り合いなんて、それくらいしかいないし。だから、来るのは彼女と彼女の友達だけど」
「そんな話っ、今までなかった……っ!」
「聞かれてないから……」
頭を抱える高橋。俺はその光景を前から見て、こっそり笑った。
なんというか、男友達の集まりという感じで、新鮮だ。