亘さんは世渡り上手
「……ん? ほんとだな、ちょっと荒くなった。じゃあ、それが本当の理人か?」
高橋にも気付かれてしまった。
汚れひとつない目で見られて、取り繕う考えすら思い付かない。
「……ああ。俺、ちょっと猫被ってた、かも」
二人はどう思うだろう。今まで信用されていなかったことに関して、やっぱり怒るだろうか。
なんて、俺の不安なんて露知らず。高橋は、にやぁっと口を大きく横に広げた。
「へっへっへっ! そうかぁ! 理人の素を見るのは俺らが一番乗りか!?」
「いや、一番は亘さん」
「なんだよ上げて落としやがってーっ!」
……なんで?
亘さんといい高橋といい、こういうやつらばっかり。こんなに簡単にうまく行っていいものなのか。
ついていけない。
だけど。
こうなったのも、亘さんのおかげだ。
「……亘さんが俺を変えてくれたんだ」
自然と頬が緩む。
亘さんが作ってきたクラスの雰囲気が、きっとこうさせたんだ。
「なぁ宇佐美くん、合コンを前にノロケてくる友達がいまーす」
「俺の彼女の写真見る? 可愛いよ」
「ウワッ、裏切られた。もう誰も信じられない」
俺のかなり重要な告白が、さらっと流れていってしまった。
あっさりしすぎてうまく飲み込めないのに。
なんでこんなに、胸が熱いんだ。