亘さんは世渡り上手


それからしばらく胸の熱さに気を取られながら雑談していると、合コンが始まる時間になるようだった。


宇佐美が彼女と連絡を取って、ファミレスの店内へ案内していく。


女の子が三人入ってくると、高橋は目を輝かせて物色していく。おい、あんまり露骨にそういう目で見るなよ……。


――そして。



沢渡(さわたり)皐月(さつき)ですっ。皐月って呼んでください!」



彼女は自己紹介のトリにそう言って笑った。


勝手に反応してしまった。肩が露骨に揺れて、沢渡さんに変な顔で見られる。



「えっと……理人、くん? どうかしました?」


「な、なんでもない」



マジか。


俺、『わたり』が入ってたらもう反応してしまうのか。


しかも、初対面だからか敬語で話しかけてくるし。声も顔も何も似ていないのに、それだけで重ねて見てしまう。


重症だな、俺……。



「……理人くんって、私のお母さんに似てますね」


「そ、そうなんだ」


「うん、ほら目元とか……」



沢渡さんは机越しなのに無駄に近付いてくる。


これが肉食系ってやつなんだろうか。



「あの、沢渡さん」


「皐月でいいですよ!」


「皐月……うん、そうだな。なぁ、皐月」


「なんですか?」


「高橋を、構ってやってくれないか?」



俺の隣には、頬を膨らませて腕を組む、今日の主役がいらっしゃった。



「ふふ、そうですね。じゃあ、席替えで!」



はぁ……ものわかりの良い子でよかった。

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