亘さんは世渡り上手


なんとか高橋に皐月と話す機会を与えることができた。二人は隣同士になった後、楽しそうに会話し始める。


高橋は元々人とすぐに仲良くなれるやつだし、皐月ともうまくいけばありえるかもな。


ただ、ちょっと気になるのが、皐月がたまに俺のことをチラ見してくるところだ。まさか、俺が気になってる……なんてことは、ない、よな?


今日はちゃんと高橋が主役だって説明してもらってるはずだし……高橋と仲良くなりに来る以外目的はないはずだ。


――こんなの、合コンなんて名ばかりで実際は高橋に女子を紹介する日なんだから。


昼食もファミレスで済ましてから、近くのカラオケに行くことになった。


宇佐美は彼女と、そして高橋は皐月と並んで歩くので、俺も自然ともう一人の女子を横に並んで高橋の後ろに付く。


彼女も俺と同じく付き添いで来たらしく、俺は安心して彼女の横に立てていた。



「皐月、高橋くんの写真見たら行きたい! って唯一名乗り出たんッスよね」



パーカーのポケットに手を突っ込みながら、彼女は軽く呟いた。


よかった。どうやら、皐月は最初から高橋目当てでここに来ていたようだ。なら、俺の勘違いか。


よく考えたらそうだ。谷口から感じる視線と皐月から感じる視線は、まったくの別物だった。


谷口から本物を学んだはずなのに、まだ治ってないんだな……。

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