亘さんは世渡り上手
「でもね。そういうところじゃないんだよ、亘さんの良いところって」
そう満足そうに言う姿を見て、俺は心に影がかかったように苦しくなる。
笑わなくても、友達ができる人間が本当にいるなんてな。
だって、変だろ。
どうして。
俺は、こんなに必死なのに。
「聞き上手って言うのかなぁ、話してて気持ちいいんだよね。
どんな話をしても嫌な顔しないで最後まで聞いてくれるし、一緒にいると落ち着くんだよ。
そういう意味では、無表情っていうのも利点だよね」
……話を聞くだけでいいなら、亘さんじゃなくてもいいはずだろ。
心のもやが強くなる。
黒く染められていくようだった。
「なるほどね、じゃあ俺も亘さんと話してみようかな」
「おっ、いいじゃん! 確かに初めは近寄りがたいんだけど、話してみるとなぜか心地良いっていうか、不思議なんだよねー」
亘さんがほめられるたび、俺の心は重くなっていく。
これは、あれだな。
俺、亘さんのことが嫌いだ。