亘さんは世渡り上手
「皐月ちゃんよかったなー! 可愛いし、明るいし。俺と合いそう!」
皐月達と解散した後、俺達も駅に向かって歩いていた。
高橋はご満悦だ。今日は二人に付き合って本当によかった。
「……なぁ、二人とも。俺と、ラインを交換してくれないか?」
こういう機会があったから、俺はこう言える。
二人は立ち止まる。高橋がきょとんとした顔で首を傾けた。
「え、でも、理人……親がどうとかって」
「あれ、全部嘘なんだ。
俺には厳しい母さんなんていなくて、行動も制限されてなんかない。ただ、俺がおまえらのことを友達だって思えてなかっただけなんだ」
ごめん、と息を吐ききる。辺りが静かになった。
そうだよな。猫被りは許せても、さすがにこれは許されないよな。……なんて、今朝の俺なら思っていたことだろう。
でも、俺は確信していた。きっと、この二人は――。
「じゃあ交換しようぜ!」
「次遊びにいくとき楽になるな」
同時にスマホを差し出してきた。
俺は思わず笑いがこぼれる。
「……やっぱり、怒らないんだな」
俺が呟くと、二人は顔を見合わせると声を揃えて言った。
「「俺ら頭悪いから難しいことわかんねぇよ」」
笑顔が、眩しかった。