亘さんは世渡り上手
珍しい。こんなに思い出しても、俺の腹にはあの切り裂く痛みはない。
驚きと同時に自信が溢れてくる。
俺はもう、アイツに怯えてばかりじゃないんだ。
目を閉じれば、亘さんの顔が浮かぶ。
「……お見舞いに来いって言ったら、来てくれるかな」
いや、どんだけ亘さんに会いたいんだよ、俺。
亘さんの声が聞きたい。亘さんの顔が見たい。あの少しひんやりした手で、手を握ってもらいたい。
「あああ……なんだよ俺、気持ち悪いぃ……」
なんでこんなに、女子みたいなこと考えてるんだ。
でも、早く伝えたいんだ。俺のこと。
そして、伝えても怖くないんだって言いたい。こうなったのも亘さんのおかげだとお礼も言いたい。
ここ最近の俺は、亘さんのことばっかりだ。
嫌いから、嫌いじゃなくなって――好きになった。
おかしいよな。
俺と亘さんは、友達なのに。
「友達じゃないだろ……こんなの」
きっと俺のこの感情は、友情を越えようとしている。
だから、俺は亘さん離れをしないといけない。