亘さんは世渡り上手
シャワーでさっぱりしたので、解凍したドリアを食べながら初めてのグループラインを眺めている。
『夏休みも勉強会しますか? 宿題を終わらせる勉強会』
『いいじゃん。宿題早く終わらせて遊びたいし。高橋、あんた絶対最終日に慌てるタイプでしょ』
『谷口!? なぜそのことを!? いや、ほんとは提出日の朝にやるけどな』
『うわ、わかる』
『悔しいけどわかる』
『ちょっと! 八木と宇佐美はわからないでよ!』
うーん、会話に入るタイミングがわからない。
普段の会話なら、俺の顔を見ながら話してくれるから返しやすいんだけど。いまいち俺が入っていいのかもわからない。
『おい! 理人も見てないでなんか言えよ! 既読数でわかるんだからな!』
高橋が催促してきてくれた。結構ありがたい。
機械音痴というほどでもないけど、ラインはあまり使ってこなかったから文字を打つのはかなり遅い。ポンポンと会話が流れていってついていけてなかったのも入れない原因にあった。
『みんな宿題はどこまで終わってるんだ?』
と送る。高橋のメッセージから会話が流れなかったことを察するに、みんな俺の言葉を待ってくれているんだろうか。もっと早く打てるようになろう。
『何も手を付けてない』
『何もやっていない』
『まだ』
『あと三割くらいです』
『漢字のワークだけ終わらせたよ』
さっきの会話からそこそこ予想できた結果だった。