亘さんは世渡り上手


そして、俺はというと。


亘さんに何か企みがあるんじゃないかと、変に勘ぐってしまっていた。


亘さんはそういう人じゃない。ただ単純に俺と友達として誘ってくれているんだろう。でも、俺はどうしても、別の理由がほしかった。


遊びたいから、じゃなくて。例えば、谷口をもっと焚き付けるため――とか。


俺と亘さんがこれ以上距離を縮めてしまわない理由がいい。



「……いいよ。他に誰誘う? えっと、谷口とか……」



二人きりは嫌だ。



「りっ、理人……!」



谷口が嬉しそうに目を輝かせる。


ごめん、谷口。逃げ道にして。


俺はおまえの恋心をもてあそびすぎだよな。



「…………そう、ですね。谷口さんも一緒で構いません」



亘さんはそのまま高橋の方を向いて、勉強を教え始めてしまった。


何かおかしい。いや、そんなの、誰でもわかることだ。


一瞬目を伏せたときの、亘さんの表情が……また、友達から離れようとしているように見えた。俺は、もう亘さんと友達をやめるつもりはない。


そう、せっかく、亘さんと友達でいることを選んだのに。また亘さんは、俺から離れるのか?



「……なるほどね」



隣で谷口が呟く。


だから……なんで谷口ばっかり、亘さんのことを理解してしまうんだ。

< 133 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop