亘さんは世渡り上手
そして、俺はというと。
亘さんに何か企みがあるんじゃないかと、変に勘ぐってしまっていた。
亘さんはそういう人じゃない。ただ単純に俺と友達として誘ってくれているんだろう。でも、俺はどうしても、別の理由がほしかった。
遊びたいから、じゃなくて。例えば、谷口をもっと焚き付けるため――とか。
俺と亘さんがこれ以上距離を縮めてしまわない理由がいい。
「……いいよ。他に誰誘う? えっと、谷口とか……」
二人きりは嫌だ。
「りっ、理人……!」
谷口が嬉しそうに目を輝かせる。
ごめん、谷口。逃げ道にして。
俺はおまえの恋心をもてあそびすぎだよな。
「…………そう、ですね。谷口さんも一緒で構いません」
亘さんはそのまま高橋の方を向いて、勉強を教え始めてしまった。
何かおかしい。いや、そんなの、誰でもわかることだ。
一瞬目を伏せたときの、亘さんの表情が……また、友達から離れようとしているように見えた。俺は、もう亘さんと友達をやめるつもりはない。
そう、せっかく、亘さんと友達でいることを選んだのに。また亘さんは、俺から離れるのか?
「……なるほどね」
隣で谷口が呟く。
だから……なんで谷口ばっかり、亘さんのことを理解してしまうんだ。