亘さんは世渡り上手

■■■



「じゃあねー!」



手を振る谷口に軽く振り返す。


谷口と八木が一緒に帰っていく後ろ姿を見て、俺達も駅へと向かい始めた。


それにしたって空気が重い。



「亘さん、大丈夫?」


「……っえ?」



今までずっと下を向いて歩いていた亘さんが、俺の言葉で顔を上げる。


谷口と八木がいたときはまだいつも通りだった気がしたけど、別れた直後にこの有り様だ。高橋と宇佐美からは、おまえがなんとかしてくれという視線ばかり送られてきた。



「あ……すみません。少し考え事をしてしまって……」



亘さんらしくない。


そりゃあ悩みのひとつやふたつ、誰にだってあるだろう。でも、それを見せないのが亘さんだ。見せずに、自分で勝手に行動するのが亘さん。 


こんなに露骨に気分が沈むほど、何かあったってことなんだろうか。



「和泉くん……」



俺を見上げる亘さんの表情に、胸が大きく鼓動を打った。


俺に、助けを求める目だ。


自分で解決しようとする亘さんが、俺に、俺なんかに、頼ってくれている。


ずっと、亘さんに頼ってばかりじゃダメだと思ってた。俺だけが不幸なわけじゃないし、亘さんが幸せなわけじゃないから。


俺が、亘さんの力になれることがあるなら……。



「相談が、あるんです。……和泉くん」


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