亘さんは世渡り上手
「理人、叶葉ちゃんのこと好きだろ」
やっぱり、バレてた。
亘さんが帰った途端言われた言葉は、俺の胸に深く突き刺さる。
「父さん……もしかして、合格って」
「ん? そうだ。恋人として、理人と付き合っていいという意味だ」
つまり、恋人候補としての合格って意味か……。
亘さんとは恋人になる予定なんてないんだけどな。
確かに、俺は亘さんのことが……友情としても、恋愛としても、好きなのかもしれない、なんて思ってしまったけど。
でも、亘さんは俺のことなんて友達としてしか見てない。きっと、これから先もずっと。
だから、父さんのそれは無意味なんだ。
「父さんな、理人の将来の恋人には条件があったんだ。一つ、理人の気持ちを考えられる子。二つ、理人を信じられる子。三つ、理人のことが好きな子。ってな」
「亘さんは、俺のこと好きじゃないよ」
「……どうかな?」
「え?」
そんなまさか。
やめてくれよ。
俺はせっかく、谷口に対して気持ちを向けていこうと思っていたのに。
自覚した亘さんへの気持ちは今すぐにでも吐き出して、失恋っていうことにしたいのに。
それに……その条件だったら、谷口にだって当てはまる……。