亘さんは世渡り上手
「あ、忘れてた。四つ、理人が心から好きな子」
「――――」
ああ……ダメだ。
そうだよ、俺は亘さんのことが好きだ。
俺のことを、いつまでも見限らなかった亘さんのことが好きなんだ。
「理人。叶葉ちゃんと目が合うとき、それは理人が叶葉ちゃんを見ているのと同時に、叶葉ちゃんも理人を見ているんだ」
もし、少しでも希望があるなら……そんなことを考えてしまう。
でも、そうしたら谷口は? 谷口はどうなるんだよ。ずっと俺に希望を持ち続けてくれていて、今日俺が中途半端に歩み寄ったことで喜んでいるはずだ。
いや……なんで悩んでるんだ、俺。自分は選べる権利があるとでも思い込んでるのか。とんだ勘違い野郎だ。
「父さん、俺、亘さんに好きになってもらいたい。でも、自分に自信がないんだ。俺のことを好きになってもらう方法がわからない」
俺の好きな人は亘さんだ。
自分勝手でいいんだろ。同情なんかで谷口を好きになるなんて、谷口に知られたらぶっ飛ばされてしまう。
父さんは数秒を俺を見ると、ニヤリと笑った。
「好きになるかどうかは叶葉ちゃんの好みもあるだろうからなぁ。……でも、全力で気持ちを伝えられて、心が揺さぶられないやつはいないだろう」
確かに、それには俺も経験がある。