亘さんは世渡り上手

亘さんと谷口



俺は、腕を組ながら壁に寄りかかって目をつむっていた。


カラン、コロン、と聞こえてくる下駄の音が心地いい。


俺と亘さん、それから谷口の三人で行くことになった夏祭り――当日。


待ち合わせ場所でひとり、俺はカップルを見ないために目をつむっている。


緊張しかない。俺が好きになった女の子と、俺のことが好きな女の子。その二人と遊ぶんだ。


……どうなんだ、それ。


俺、どう見ても不誠実な男だな。


もう一人くらい、男を誘ってもよかったんじゃないか?


でも、高橋は皐月と行くし、宇佐美は彼女がいるしな……八木を呼んだらもっと俺が不誠実に見えるだけだし。俺の交友関係、狭すぎ。



「理人ぉー!」



その呼び掛けに目を開けると、浴衣姿の谷口が大きく手を振りながらこっちへ向かっていた。


どう見ても気合いが入っていることがわかる。髪型も、いつものショートボブからかなりヘアアレンジして綺麗な髪飾りをしていた。


悔しいけど、可愛い。


亘さんは、浴衣で来てくれるだろうか。亘さんの浴衣、正直すごく見たい。



「おまたせっ! ……あれ、亘さんはまだなんだ、意外。集合三十分前には来てそうなのにねあの子」


「そうだな」


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