亘さんは世渡り上手



「わかった。いいよ、思う存分亘さんと理人を連れ回してあげる!」



谷口は胸を張って、太陽みたいな笑顔を見せた。もうすっかり夜も更けて、あと約二時間後には花火が空に咲くというのに、先にもう花火が見られたような明るさだった。



「お二人とも、すみません、待たせてしまって」



そこへ、亘さんが小走りで俺達のもとへとやってきた。浴衣じゃなかった。ちょっとガッカリ。



「もー、遅い! 早く行こ! 私お腹空いたんだよね!」



そう言って、谷口は亘さんの腕を取る。


来た途端ぐいぐいと引っ張られて、亘さんは困惑していた。



「えっ、あ、あの、谷口さん?」


「今日は思いっきり二人の邪魔をしてあげるから、覚悟してね」


「あ……」



先行する谷口と腕を引っ張られている亘さんに俺は付いていく。


てっきり亘さんは谷口に笑顔のことを嬉しそうに話すかと思ったのに、どこか強張った表情で谷口を見るだけだった。


やっぱりまだ何かあるのかもしれない。


だからこそ、今は存分に祭りを楽しんでほしい。



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