亘さんは世渡り上手
数分後、俺は谷口に焼きそばとたこ焼きとフランクフルトが入った袋を持たされ、完全に荷物持ちとされていた。
満足そうに俺の前を歩く谷口は、りんご飴とクレープの屋台を見つけると「あ! デザートも買っとこー!」と駆け寄る。もちろん、俺に目配せをしてからだ。
俺は両手にぶら下がる袋を見ながらも、逆らえまいと後を付いていく。
「……あ、あの、和泉くん、半分持ちます」
「いや、いいよ。大丈夫」
亘さんに手を差し出されたけど、ここは断っておく。
一応男の役割だとも思うし、谷口は亘さんの腕を強引に引っ張って俺に近付かせようとしない。その際にこっちに向かって舌を出して意地悪に笑うのは、完全に俺への八つ当たりだった。
だったら、おとなしくその八つ当たりに乗っておく。谷口の期待を裏切ることをしたわけだし、せめてもの罪滅ぼしだ。
「あ! 亘さん、あれやろ、射的! 勝負しよ!」
「は、はい……わかりました」
亘さんは俺をチラチラと気にしながらも、谷口が妙に絡んでくるのが嬉しそうでもあった。微妙に口角が上がってるけど、それを亘さんも谷口も気付く気配はない。
お腹が空いてたんじゃないのか。……まぁ、いいか。
「うわっ! 酷い! 亘さん、それ、私が狙ってたやつ!」
「え、そうだったんですか!? あ、じゃあ、はい。プレゼントです」
「なっ、いらないし! ……も、もらうけど!」
谷口は亘さんからペンギンのぬいぐるみを受け取っていた。