亘さんは世渡り上手


「俺達もここで花火見るんだ!」と高橋と皐月は俺達の後ろの段に腰を下ろした。



「なんか増えてる!」



顔を上げた谷口は突然現れた高橋と皐月におののく。亘さんのことで混乱していた最中だからか、通常よりもさらに振動した。


皐月はそんな様子の谷口と……潤んだ瞳で谷口を見つめる亘さんを見て、こてんと首を傾げる。



「理人くん、二人とも理人くんの彼女ですか? 可愛いですね」


「皐月、俺は堂々と二股するような男じゃない」



いったい俺にどんなイメージを持ってるんだ。おいこら高橋、けらけら笑ってないで否定しろよ。


そんな俺と皐月のやり取りに、谷口はピタリと動きを止める。頭を抱えたまま。



「皐月!? それって下の名前だよね!?」


「え? は、はい、そうですけど……」



それを聞いた途端、谷口は皐月から俺に詰め寄り変えた。



「な、なんてうらやましい……! 理人ぉ! 亘さんに下の名前を呼ばせる代わりに、理人も私を悠里って呼んで!」



なんの代わりだよ。



「ず、ずるいです! 和泉くん、わたしが悠里ちゃんのことを名前で呼ぶ代わりに、わたしのことも名前で呼んでください!」



だからなんの代わりなんだよ。


って……いやなんで亘さんまでもが参戦してこようとするの?


え? 今まともなのは俺だけなの?

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