亘さんは世渡り上手


どう答えるのが正解かわからずに、後ずさる。すると、それと同じ距離を谷口と亘さんは詰めてくる。


一向に距離が変わらない。逃がさねぇぞという圧が伝わってくる。



「ふふ……楽しそうですね」



俺の気も知らずに、皐月が朗らかに笑ったのを見て、はっとした。


あ、亘さん、元気かも。生き生きとしながら、谷口と一緒に俺にじりじりと近付いてきている。


俺は二人の肩を掴んだ。


途端、同時に頬を赤くして、キラキラと輝く目で俺を見つめてくる。



「……そろそろ、花火が始まるぞ」



それが合図となったかのように、上空からドン、大きな音と振動が伝わってきたのだった。


い、いや、こんなところで答えは出せないだろ……。亘さんの名前はめちゃくちゃ呼びたいけど、このノリで呼ぶのは、なんか違う気がする。



「残念でしたね、悠里ちゃん」


「うん、ほんと理人って女の子をもてあそぶのが上手……って、だから、許可してないってば!」


「わたしのことは、叶葉って呼んでください」


「嫌だ!!」


「そうですか……なら、言ってくれるまで諦めません。叶葉って呼んでください叶葉って呼んでください叶葉って呼んでください」


「ちょっ、怖いって……わ、わかった! 呼ぶから! かっ……叶葉! はい、これで満足!?」


「叶葉って呼ん大大大満足です」



うん……亘さんが嬉しそうに笑ってるから、いいか。

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