亘さんは世渡り上手
そうだ。亘さんは、自分の中にあったわがままな部分をごまかしていたんだ。
それも、無意識に。
わがままな自分が人に嫌われると思ったから。
わがままな自分が信頼できなかったから。
決して、俺のように周りまでを信頼できなかったわけじゃなくて、自分だけ。自分だけなんだ。
だから、自分を信頼できないから、あのとき自分が写った写真を笑顔で撮ることができなかった。
……わかった、わかったぞ。
亘さんが誰とでも笑い合える方法が。俺と一緒に笑って写真を撮る方法が。
「理人くん」
手に冷たいものが触れる。
「……なんちゃって」
だけど、一瞬で離れてしまった。
それに俺の手は、いや、手だけじゃない、体全身に熱が帯びて―――隣ではにかむ亘さんに目を向ける。
え、今の、亘さん、だよな? お、俺のこと……理人くん、って……。
亘さんは、何事もなかったかのように花火を見上げている。でも、その赤い頬が何があったかを表しているようで、俺にまで移ってしまう。
なっ、なんなんだ!? 夏の暑さでおかしくなったのか!?
意図が全然読めない……。無表情じゃなくなったら何を考えているのなんてすぐわかると思ってたのに、見当違いだったみたいだ。
幸いにも、谷口は気付いていなかった。
でも……視線は感じる。
まさか……。