亘さんは世渡り上手
俺の不自然な行動のせいか、三人の意識は皐月に向いていた。
「あの人……高橋くんの……」
「あぁ、うん。高橋の彼女……予定の子?」
もしかしたら、今日告白したのかもしれないけど。
亘さんは困った顔で首を傾げる。
「高橋くんのことが、好きなようには……いえ。杞憂ですね」
「え? 杞憂じゃないよ。どう見ても好きじゃないでしょ」
……谷口がばっさり言い捨ててしまった。
そ、そうなのか? 女子にしかわからない何かなのか、それとも、俺が恋愛経験ないからなのか。
どちらにしても、そうなら高橋は……あんなに嬉しそうだった高橋は。
そうじゃないと、信じたい。
うん、まだわかってないから。亘さんの観察力と、谷口の女の勘を使ってしても当たらないことも……苦しい。
「まぁ私には関係ないけど。危なかったら警告くらいしといてあげなよ、理人」
相変わらず高橋には冷たい谷口だ。
警告って言っても、俺は皐月が高橋のことを好きじゃないなんて思ってないわけで、できるタイミングもなさそうなんだけど。
でも、谷口が言うならもう少し高橋の言う皐月の話に耳を傾けてみるか。
「あ。あのさ理人。私、亘さん、」
「叶葉です」
「……こほん。か、な、は! と二人で帰りたいんだけど、いいよね?」
そして、谷口のその一言はとても断れるような空気じゃなく、俺は一人で帰ることとなったのだった。