亘さんは世渡り上手
「じゃあ、明日からもお話しようね、亘さん」
もちろんメモは最小限でね、と付け加えて、俺は自分の席へ戻った。
すると、さっきの女子が話しかけてくる。
「あ、どうだった? 亘さん。なんだか不思議な気持ちになったでしょ?」
「……うん、よくわかったよ」
「でしょでしょ!」
亘さんが友達の多い理由は大体わかった。
だけど、俺には通用しない。
あの俺をじっと見つめる目を、歪ませてみせる。
亘さんの方を見れば、メモをじっと見つめていた。
あのメモ帳は、亘さんにとって一体なんなのだろうか。
だって彼女は、メモなんかに頼らずとも友達を作ることのできる才能がある。
努力をしてクラスの仲を盛り上げようとする気持ちがある。
彼女は委員長としてクラスのことを一番に見ている。
それだけやってのけて、それでもなおあのメモ帳を更新し続ける意味はあるのだろうか。
それを知るためにも、とりあえずあのメモ帳は――邪魔だ。