亘さんは世渡り上手


それから他のことも話し合いを進め、俺達のクラスはお化け屋敷をすることになった。


通常はこんなにあっさり決まることはないらしく、先生からほめちぎられた。やっぱり、俺達のクラスは他と比べると異常に仲がいいみたいだ。


そして、帰り道。すっかり六人で帰るのが自然になっている。



「カップルが来たら全力で呪ってやる……」



というのは、自らお化け役を買って出た谷口の恨めしい言葉。


まさかとは思うけど、お化け役をしたがったのはそれが理由なんじゃ……。


さすが、まだ教室をどんな風にお化け屋敷にするのかも決める前から一人だけ率先した人は気持ちが違う。



「ついでに叶葉も呪ってやる」


「ど、どうしてですか!?」


「私の方を見てからミスコンに出るの決めたからだよ!」



覆い被さるかのように大きく腕を広げ、谷口は亘さんに近付いた。逃げる亘さん、追いかける谷口。


亘さんは嬉しそうに笑っていた。



「これ、誰も指摘しないから、あたしが言っていい?」



俺の隣で一緒に傍観していた八木が、全員に聞こえるように言った。



「亘さん、笑ってるんだけどさ」



谷口がピタリと動きを止める。追いかけられなくなった亘さんも同様だ。


ギギ……ときしんだ音が聞こえるかのようにつたない動きで首を回し、亘さんを見る谷口。



「「うわーーーーっ!! ほんとだーーーーーっっっ!?!?」」



驚く谷口……いや高橋も一緒かよ。


え? というか、今どころか夏休みのときも気づいてなかったのかよ。

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