亘さんは世渡り上手

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放課後、すっかり文化祭ムードになった教室では、居残りをして作業をする生徒が何人か残っている。


今日はミス・ミスターコンの投票用紙に貼り付けるための写真撮影をするらしい。だから、集合場所に行きたいんだけど……。


俺と亘さんはイスに座らされて、四人に囲まれていた。



「メイクしてあげる!」



谷口がいきいきと両手に化粧品を持ってイスに座る亘さんの前に立つ。その後ろには、八木がヘアアイロンを持って待機している。



「あの、お化粧は校則で禁止されていますが……」


「堅いこと言わない! バレないメイクにしてあげるから!」



確かに、その校則を守ってる女子の方が珍しいと思う。


一方、俺は。



「うわ、理人の髪さらさらだなー! いじりがいあるぜー!」



高橋に、髪の毛をセットされようとしていた。


たかが写真撮影のためだけに、こんなに気合いを入れて着飾る必要はあるのだろか。


正直言うと、そこまでして優勝したいとは思わないけど……。


うーん、でも、まぁ。



「この女、顔が良すぎる……悔しいけど、メイクがここまで楽しいの久々だわ……」


「髪も手触りが絹みたい……これは天使が現れてしまうな……」


「前髪は上げるか、それとも流すか……迷うな……」


「理人はツンツンにしない方が似合うと思う」



こいつらが楽しそうだから、いいか。

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