亘さんは世渡り上手



「やっほ、和泉くん」



下校しようと教室を出たときだった。


廊下には三好先輩が壁に背を預けて立っており、俺に気付くとひらひらと手を振ってくる。


無視してやろうかと思ったけど、自分で決めたことなので足を止めた。


後ろには亘さんがいる。あまり聞かれたくないので場所を移動してほしいと三好先輩に提案して、皆には先に帰ってもらうことにした。


そして、人通りのない渡り廊下。



「僕、あれから色々考えたんだけどさ。自分の気持ちは本物だなって感じたから、ここは正々堂々と行こうと思って」


「偶然ですね。俺も同じことを思ってました。先輩を邪険にし続けるのはやっぱりカッコ悪いかなって」


「へぇ、もしかして僕達、相思相愛?」


「そんなわけないでしょう」


「冗談だよ。そんな怖い顔しないでよ」



ペシペシと肩を叩かれて、さりげなくはらう。


「嫌われてるなー」と笑う三好先輩。俺はそれに、少し気まずくなって重い口を開く。



「……いや、別に、嫌いなわけじゃないです。好きではないですけど。先輩みたいに、恐れないでぐいぐい前に進んで行くところは、普通に……尊敬します」



三好先輩はパチパチと瞬きをして、戸惑った様子で乾いた笑いをしてきた。


ほら……だから気まずいんだよ。

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