亘さんは世渡り上手
亘さんと文化祭(一日目)
文化祭一日目。二年生の舞台発表がメインで、後は部活や三年生が行う模擬店の宣伝、有志の出し物を見るため、基本一年生は出番がない。
学校から少し離れたコンサートホールへ行き、出席番号順に座っていく。俺の隣には宇佐美がいるので、少しは気楽だ。
基本一年生は出番がないと言ったけど、俺と亘さんはミス・ミスターコンのために舞台上に立たないといけない。時間をしっかりと確認していると、周りのクラスメートがエールを送ってくれた。
「理人っ、頑張れよ!」
「早くチョコ食いてーなー」
そう、優勝の景品でクラス全員にお菓子が配られるので、それ目当てに応援してくれるやつもいるのだ。
興味なんてなさそうにしていたくせに、景品がでると知るやこうなるとは、現金なクラスメートである。
優勝者個人には明日の模擬店でどれでも一品無料券がもらえる。もし、俺が優勝できたら……亘さんと。
そして、三好先輩も二年生の代表としてミスターコンを勝ち進んでいた。
正々堂々と勝負ができるというものだ。
あの宣戦布告から三好先輩は俺達の前に現れることはなかったけど、亘さんのことは諦めていないだろう。
というか、諦めてるわけがない。
「あ、和泉くん」
声をかけられて顔を上げると、三好先輩だった。
「今日はよろしくね」
パチンとウインクをされる。
望むところだ、と笑い返した。