亘さんは世渡り上手
亘さんと勉強会
もうすぐテスト期間だ。
やることといったら、勉強。それただひとつのはずである。
だから俺は早く家に帰ってゆっくり勉強したかったのに、クラスメートに呼び止められてしまった。
「そういえば昨日のドラマ見た?」
「見た見た! 藤上くん、ちょーかっこよかったよねー!」
「いや、藤上よりヒロインの方が可愛かっただろ!」
「それ単におまえがその女優の顔が好みなだけじゃね」
いやなんだこれ。
俺は、勉強会がしたいと言われたから参加したんだけど。
俺を入れて五人。男三人女二人。教室の端で机をくっ付けあって、机の上に乱雑に散らばった教科書、ノート……そして甘い匂いのする菓子。
チョコレート、クッキー、ポテトチップス、アメ。いろんな甘い匂いが混ざってできたこの異様な香りに、なぜ誰一人気分を害さないんだ。
「あれ、みなさん楽しそうですね」
亘さんが本を抱えて現れた。
図書室帰りだろう。