亘さんは世渡り上手


照明がチカチカと俺を照らして、歓声が俺の耳をつんざく。


眩しい。


でも、綺麗だ。



「さあ始まりました、ミスターコンテスト! 最終候補に選ばれたのは、この三人だー!」



司会がハイテンションで拳を突き上げると、より一層歓声が強くなる。


自分のクラスの方を見ると谷口と目が合ったので、試しにと満面の笑みを浮かべてみた。


瞬間、谷口が真っ赤な顔になってイスの背もたれに倒れ込む。よし、笑顔の出来はまずまずだな。



「まずは一年の優勝候補、和泉理人くん! 和泉くん、意気込みをどうぞ!」



司会にマイクを向けられる。


俺は、今自分が出せる百点満点の笑顔で答えた。



「今日は皆さんに、俺だけを見てもらいます。だから、よそ見はしないでください」



黄色い声が会場全体に響きわたる。


舞台袖にいる亘さんの顔が見れないのが残念だ。


でも、大丈夫。


きっと、亘さんは俺を見てる。



「……キミ、僕の前でそんな笑顔したことないじゃないか」



三好先輩が隣で小さくなんか言っていた。


……あんたに笑いかけるわけないだろ。


とても気が散った。

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