亘さんは世渡り上手
そんな声に目を向ければ、クラス委員長の亘さんが飲み物が入ったグラスを両手に首を傾げていた。
「ああ、うん、俺は今出たとこ。どうぞ、亘さん」
「あ、はい。ありがとうございます」
そう言って場所を入れ替わったものの、亘さんは俺から目を離そうとしない。
……なんだ?
まさか、亘さんも俺を狙ってる、とか?
いや、それは本当にまさかだろ。
この無表情堅物委員長が、俺みたいな軽そうな男を気にするわけがない。
熱い視線にも全然見えないし。
相互の関係は、ただのクラスメート以外の何者でもないはずだ。
亘さんは一度考え込む仕草をすると、もう一度俺をじっと見つめて言った。
「ええと……もしかして、楽しくないですか?」
そこには一切の迷いがない。
俺の何を見てそう感じたのか、過程を見せてくれなかった。
感情の乗っていない目。何を考えているのか、全く読めない。