亘さんは世渡り上手
つまり、亘さんは何かを求めているんだ。期待しているといってもいい。
そして、俺の予想が合っていたとするならば――。
期待、してみても……いいのか?
亘さんの態度から節々に感じていた変化は、俺が亘さんに与えていたって思ってみても。
思う、ぞ? 思うだけならタダだ。思ってるだけ……。
俺は、だんだんと早く鳴っていく鼓動を全身で感じながら口を開く。
「ごめん、教えられない」
そう言うと、亘さんは一層うつむいてしまった。
「そ、そう、ですよね。すみません、図々しく聞いてしまって……」
あ、違う。そうじゃなくて。
「明日ならいいよ」
「……えっ」
目を見開いて、亘さんが俺を見る。
大きくて、キラキラと輝いた瞳。そこには今は、俺だけが映っている。
ずっとそれが続いたらいいのに。
「明日、一緒にいてくれるなら、教える」
伝わるよな? この意味。
俺の期待を亘さんも感じればいい。明日が来ることに、ドキドキして少し寝不足になればいい。
明日まで、俺のことだけ考えていればいい。
「…………は、はい。一緒に、いたいです」
亘さんの頬が少し赤い。
そうだ、それでいい。