亘さんは世渡り上手
亘さんと文化祭(二日目)
「きゃああああ!!」
悲鳴が聞こえたと思ったら、女子が涙目で教室から出てくる。その後ろを、焦った表情の男子が次いで飛び出してきた。
「ありがとうございましたー」
俺は笑顔を絶やさないように走っていくカップルを見送る。
文化祭二日目。教室の中からは、抑えきれていない谷口の高笑いが聞こえてきた。
「ふぅ……そろそろ交代時間だな」
時計を見ながら、次の受付役がやって来るのを待っていると……。
「おーい、和泉くーん」
両脇に女子二人を侍らせた三好先輩が現れた。
まったくもって呼んでいない。
周りの視線が俺たちに集まっていくのがわかる。昨日のことがあれば、俺達が勝ち負けのある関係だというとは明白だ。気さくに話しかける三好先輩が次の言葉、どんなことを話すかわからない。
……まぁ、この人は単純に俺のクラスを見に来ただけなんだろうけど。
「僕達も入っていいかな?」
「あ、俺今から休憩時間なんで、受付は別の人です。では」
「えー? いいでしょ? ちょっとくらい、ね。和泉くん。受付してよ~」
「ウザいです」
負けたからって、すぐに諦めて他の女と遊んでいるところが気に入らない。
昨日は、あんなに真剣だったのに。
……真剣だったよな?