亘さんは世渡り上手
「……そ、そういうことかよぉ!」
「早く言えよ理人」
「じゃ、あたしたちは帰ろっか~」
「あ……うん、帰るね」
四人はにやにやと片付けをして帰って行った。
おまえら、その俊敏さを勉強に活かせよ。
教室には、俺と亘さんの二人きり。
亘さんは俺のことをじっと見ているけど、いつものような見透かす目じゃない。
言うなれば、呆然とした目だった。
「……あの、ありがとうございます」
「ん? 何が?」
あー、やっぱり、そんなに乗り気じゃなかったんだ。
でも俺は、知らないふりに徹する。今の俺は亘さんと二人きりになりたかった、ただの軽薄な男。
「とりあえず、亘さんも座りなよ」
「……え」
「あー、亘さんって数学得意? 俺、ここの公式がよくわからなくてさー」
「あ、ええと……ど、どこですか?」
「んー、ここ、ここ」
戸惑いながらも、亘さんは俺の隣に座った。