亘さんは世渡り上手
その後、亘さんが撮り直したいと言って聞かないので仕方なくもう一枚写真を撮った。
二人で笑顔の、だけど少し緊張がにじみ出ているような表情の写真。あんなやり取りをした後で浮かれないわけがなく、肩を寄せるたびに亘さんは顔を赤くしていた。
こんなに幸せなことがあっていいのだろうか。
俺の気持ちはしっかりと亘さんに届いて、亘さんはそれを受け入れてくれる。それがここまで胸をいっぱいにしてくれるなんて思わなかった。
俺は、すぐ隣にある亘さんの肩に頭を乗せる。
「わっ……い、和泉くん?」
「ほんとに?」
「え?」
「ほんとに俺の彼女になってくれる?」
「……」
亘さんからの反応がなくて不安になる。
表情を確認しようかと頭を上げようとしたとき、コツンと固いものがぶつかる感覚。
「……もちろんです」
その声がとても優しくて、きゅっと胸が締め付けられた。
あー、俺、亘さんを好きになってよかったんだな。
心臓がドクドクと波打っているのが聞こえてくる。強い音なのに、穏やかだ。
身体が火照ってきたのをごまかすように俺は亘さんから離れて、窓を開けた。
「亘さん、次はどこに行く?」
「そうですね……」
そして、亘さんはそよ風のように微笑んだ。