亘さんは世渡り上手
「あ、あんた達……わざわざそれを報告しに戻ってきたわけ……?」
谷口が怒りで顔を真っ赤にしながらふるふると震えている。
そう、俺達は、自分のクラスに戻ってきた。
谷口へのお土産を渡しに行くのと……俺達の新しい関係を報告するために。
「谷口には一番に言いたかったんだ」
「こっ、こっちはまだ失恋の傷も癒えてないっていうのに……っ! このくそぉ!」
谷口はやけ食いだとでも言いたげに俺達の持ってきた食べ物を引っ付かんで食い荒らしていく。
愚痴愚痴と言いながら食べているけど、一言も俺達に対する直接的な罵倒はしてこない。
「ていうか知ってたし! ずっと前から両想いだったとか知ってたし! たぶん二人が自覚する前からわかってたしー!」
ダバダバと涙を流す、黒い布に身を包んだ谷口。
そして、キッ! 俺達を鋭く睨み付けてくる。
「おめでとう、なんて言うとでも思ってるの?」
「いいや。一発殴ってもらってもかまわない。これは、ただ俺がけじめをつけるための自己満足だ」
「ふうん……。別に、殴らないよ。私だって、いちいちイライラし続けるのは意味ないってわかってるし。二人の判断は間違ってないよ」
「悠里ちゃん……」
亘さんが谷口の腕を取って、胸に寄せた。