亘さんは世渡り上手



亘さんと谷口の攻防戦が落ち着いたところで、谷口はウィッグを綺麗に被り直した。



「じゃ、私行ってくるわ」


「ええっ、もう少しわたしとお話してください」


「もう十分したでしょ!」


「し足りないです!」



そのまま教室を出ていこうとする谷口。それになんの迷いもなく着いていく亘さん。


さっきなったばかりの彼女を一瞬で奪われたんたけど。辛い。


俺は負けじと谷口を引き留めた。



「どこにいくんだ?」


「私も文化祭回るの! 一応お化け屋敷の宣伝も兼ねてさ。時間もあともちょっとだし、ずっと教室にこもってるのもね」


「俺も行く」


「わ、わたしも行きますからね!」



谷口は嫌そうに顔を歪める。



「……。あのさあ、二人して、私がなんのためにずっとお化け役やってたと思ってんの……?」


「でも、一人じゃ寂しいだろ」


「そうですよ!」


「いいから着いてくんな! 空気読め!」



逃げるように駆け出して、前を見ずに教室を出ようとした谷口は……。



「へぶっっっ!」



次の瞬間には思いきり顔面から人にぶつかっていた。



「も、もう……今日は散々だ……」


「す、すまない! 怪我はないだろうか!?」


「うわイケメン」



あ、ミスターコンに出てた三年生だ。

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