亘さんは世渡り上手


ミスターコンのときの印象通り、周りには男友達と思われる人が数人一緒に歩いていた。


その圧倒的顔面力に谷口は呆然と三年生を見上げて、小さく「秋に来たよ……春が」と呟いていた。


谷口の反応を見るに、さすがにここで横入りをするのは本気で嫌われかねない。そう判断した俺と亘さんは、空気に徹することにする。



「だ、大丈夫だろうか……!?」


「……はっ! もっ、問題なしです!」


「そうか! じゃあ、失礼する」


「待って! やっぱり痛いかもしれない! 足が!!」



今ので足を痛める要素何もないけどな。



「ほ、本当か!? 保健室に急ごう。歩けるか?」


「あーっ、痛いっ! 痛いな~っ、歩けないな~歩けないですね~」


「なっ!? そんなにか!? 仕方ない、背中に乗れ!」


「喜んで!」



おんぶというより思いきり抱きつきに行っていた。



「うっ!?」



今度は三年生の様子がおかしくなる。


じわじわじわ、と耳から徐々に顔全体に広がっていく赤み。



「あー、ケンちゃん、女子の耐性ないんだよね」


「感触を感じてから女子だと気付いて意識し始めたねこれは」



どう見ても面白がっている三年生の友達。


おんぶしかけの中腰のまま固まってしまっている三年生。背中には幸せそうな顔の谷口。


俺達は空気を読んでそっと教室のドアを閉めることにした。

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