亘さんは世渡り上手
まさかこんなに光の早さで谷口の機嫌が直ることが起きるなんて。
ラッキーというかよかったというかなんというか。
隣で亘さんがはぁ、とため息を吐いている。
「わたし、自分で思ってたよりずっと性格が悪かったみたいです」
「いや……俺も」
「少しだけ、ほんの少しだけですけど……ほっとしてます」
「うん……」
あれだけ谷口のことを繋ぎ止めるような言動をしておいて、いなくなったら安心してる。罪悪感が薄くなっていくと誤想する。
谷口の優しさに甘えてるなぁ、俺達。
「……」
「……」
「……あの、さ。手繋いでもいい?」
「ど、どうぞ」
休憩時間の教室では、ご飯を食べるまばらな人だけだった。さらにお化け屋敷のための迷路が死角を作っていて、まるで二人きりのような錯覚に陥る。
かろうじて話し声が聞こえてくるので耐えられているけど、手のひらから伝わる亘さんの熱に、それはそれは俺の胸は締め付けられた。
顔が熱くて、亘さんの顔は見れそうにない。