亘さんは世渡り上手


俺達のクラスは、文化祭でなかなかに良い成績を取った。


先生や生徒会からの批評として、一部のお化け役の怨恨が凄まじくリアルでよかった、だそうだ。


言わずもがな谷口のことだけど、誰一人口に出すやつはいなかった。



「打ち上げ行くやつこの指と~まれっ!」



打ち上げをやろうと騒ぐ高橋。


クラスメートは盛り上がった空気のまま、高橋の元へと群がっていく。



「MVP悠里様が主役ってことでいいよね!?」


『よろしいー!』


「わっはっはっはっ!」



谷口はやけに機嫌がよかった。クラスメートが今の発言に持ち上げてくれたこともあるんだろうけど……あのあと、何があったんだ……。


俺は……どうしようかな。せっかく亘さんと付き合えたんだから、二人きりで帰るのもありだと思うんだけど。


そんな考えも、亘さんのことを盗み見た瞬間に消え去ってしまった。


なぜなら、亘さんは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて、高橋の指に手を伸ばしていたからだ。


高橋の指に触れる前に阻止をする。



「あっ……和泉くんは、行きたくないですか? クラスのみなさん、ほとんど行くみたいですしね……」


「いーや? 喜んで行かせていただきます」



二人きりには、なろうと思えばなれるしな。

< 224 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop