亘さんは世渡り上手
俺達のクラスは、文化祭でなかなかに良い成績を取った。
先生や生徒会からの批評として、一部のお化け役の怨恨が凄まじくリアルでよかった、だそうだ。
言わずもがな谷口のことだけど、誰一人口に出すやつはいなかった。
「打ち上げ行くやつこの指と~まれっ!」
打ち上げをやろうと騒ぐ高橋。
クラスメートは盛り上がった空気のまま、高橋の元へと群がっていく。
「MVP悠里様が主役ってことでいいよね!?」
『よろしいー!』
「わっはっはっはっ!」
谷口はやけに機嫌がよかった。クラスメートが今の発言に持ち上げてくれたこともあるんだろうけど……あのあと、何があったんだ……。
俺は……どうしようかな。せっかく亘さんと付き合えたんだから、二人きりで帰るのもありだと思うんだけど。
そんな考えも、亘さんのことを盗み見た瞬間に消え去ってしまった。
なぜなら、亘さんは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて、高橋の指に手を伸ばしていたからだ。
高橋の指に触れる前に阻止をする。
「あっ……和泉くんは、行きたくないですか? クラスのみなさん、ほとんど行くみたいですしね……」
「いーや? 喜んで行かせていただきます」
二人きりには、なろうと思えばなれるしな。