亘さんは世渡り上手
ただしそれを高橋の前で言うのはどうなんだ。
どう考えたって、皐月は俺となんらかの関係を持ちたがっている。そんなの高橋の耳に入れば、ただでさえ不安定な今の状態に拍車をかけるだけだ。
俺は突き刺さる亘さんの視線にわざと背いて、口を開く。
「皐月は、宇佐美の彼女の友達だろ。そこから、なんか聞けるんじゃないかな」
「……っ! おいっ、宇佐美!」
「聞こえてた。今ライン送ってる」
「ありがと! あぁ……もし事故にあってたりしたらどうしよ……」
……皐月はたぶん、元気だ。
俺は高橋に誤解されたらまずいと思って、文化祭のとき、皐月からの接触を拒んだけど。
高橋をこんな風にさせることになるんなら、皐月の策にはまりにいってもいいのかもな。
全部皐月の思い通りなんだろう。でも、それでもいいよ。
自分を好きだと言ってくれる人さえ蔑ろにできるほど、俺としたい話があるんだよな。
俺の皐月への怒りはどんどんと増幅していく。
「ねぇ、返信、来たけど……」
宇佐美がスマホを微妙な顔で見たまま、かすれた声を出す。
「あの子、しばらく学校にもいってないってさ……」
高橋の顔色が青くなっていく。
俺はもう、我慢の限界だった。