亘さんは世渡り上手
「……俺に話、あるんだろ」
『うん。ずっとずっと、最初から、話したくて仕方なかったんだ……』
「早く言ったら? 散々はぐらかされて、もう限界なんだけど」
『ごめんね。だって、ちょっとくらいは理人くんにも自分で気付いてほしかったから』
「……何を?」
『本当にわからない?』
「皐月を信じてないから、何もわかろうとする気がない」
『うん、まぁ、それは、私のせいだよね』
「皐月」
……もういいだろ。
『うーん、あはは。えっとね、結構、緊張してたり、する。ずっと言いたかったんだよ? でもね、言ったらダメなんだっていうのもわかってた。
あのね、私。
――理人くんのこと、大嫌いなの。
だからね、なんか幸せそうなのが許せなくて。壊してやろうと思って、すぐ言ってやろうと思ってたら、私も幸せになってた。おかしいなぁ。
楽しいね、恋愛って。人に好かれるのって気持ちいいね。
でもね。やっぱり理人くんのことは嫌いだから、言うね。
私のお母さん、理人くんのお母さんなんだ』
皐月は、もう鼻をすする音を我慢しなくなっていた。
アイツ……再婚してたんだな。
俺がそう思ったと同時に、亘さんも理解したようで、隣で息を呑んでいた。