亘さんは世渡り上手



「それで、皐月は俺にどうしてほしいんだよ」



皐月の目的は、俺が不幸になることだった。たぶん、最初の目的は。


でも今の話を聞く限り、少し論点がずれている気がする。


皐月の求めてるものは。



『……けて』



俺もほしかったからよくわかる。



『助けて………』



誰か救ってくれないかって。


何も言わなくても自分の気持ちを察してくれて、助けに来てくれる人をずっと心のどこかで探していた。



『私がずっとほしかったものが、そこにあるの。でもそれを求めてるのは私だけ。


どうしてだと思う?


あの人は、まだ理人くんのことを家族だと思ってるんだよ。


だから、理人くんに、あの人を突き放してほしい。


そして、私の家族になってほしい……』



皐月はかわいそうだ。


たまたま初めてできた母親があんな女だったせいで、あんな女を求めてしまっている。


皐月がほしいのは家族であって、アイツじゃない。


でも……。


皐月はアイツを優しくて面白いと言った。そうなんだ。アイツは、母親としては悪くないんだ。女としては、最悪だけど。


だから、もしアイツに母親になろうとする姿勢があるなら。



「ひとつ条件がある」



人に助けを求めるときは、それなりの態度を示してもらわないとな。

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