亘さんは世渡り上手
剣持先輩の新しい男友達が駆け寄ってきて、真っ赤な顔を両手で押さえる先輩の背中をさすり出す。
「ごめん、和泉くん。ケンちゃんはミスターコンの後、特にモテたりはしていないんだ。クラスの女子とも、話すのには数時間は心の準備が必要なんだよ」
その新しい男友達の先輩は、あわれむように剣持先輩を見た。
「イケメンではあるんだけどね……」
「うん……」
「中身がちょっとね……」
「男友達は多いんだけどね……」
やめて。俺も悲しくなってきた。
あー、えっと。谷口? この人、結構扱いが難しいやつだ。おまえがどうしてもと言うなら応援するけど、正直俺はおすすめしない。
「えーーっと、ですね……。俺のクラスに、剣持先輩のことが気になってる女子がいるんですよね」
俺はついに機能しなくなった剣持先輩を置いて、先輩の友達と話し出した。たぶん、こっちの方が話が通じる。
『ぜひ紹介してください』
男友達一同、声を揃えてお願いされた。圧が半端ではない。
「いや、正直こっちの台詞なんですけど……」
いいのか谷口? 剣持先輩を落とそうとしたら、もれなくこの人達も付いてくることになるぞ。
……それはそれで面白いな。
「剣持先輩はどうですか?」
『ケンちゃんは限界越えて気を失っています』
あ、そうですか……。