亘さんは世渡り上手


剣持先輩の新しい男友達が駆け寄ってきて、真っ赤な顔を両手で押さえる先輩の背中をさすり出す。



「ごめん、和泉くん。ケンちゃんはミスターコンの後、特にモテたりはしていないんだ。クラスの女子とも、話すのには数時間は心の準備が必要なんだよ」



その新しい男友達の先輩は、あわれむように剣持先輩を見た。



「イケメンではあるんだけどね……」


「うん……」


「中身がちょっとね……」


「男友達は多いんだけどね……」



やめて。俺も悲しくなってきた。


あー、えっと。谷口? この人、結構扱いが難しいやつだ。おまえがどうしてもと言うなら応援するけど、正直俺はおすすめしない。



「えーーっと、ですね……。俺のクラスに、剣持先輩のことが気になってる女子がいるんですよね」



俺はついに機能しなくなった剣持先輩を置いて、先輩の友達と話し出した。たぶん、こっちの方が話が通じる。



『ぜひ紹介してください』



男友達一同、声を揃えてお願いされた。圧が半端ではない。



「いや、正直こっちの台詞なんですけど……」



いいのか谷口? 剣持先輩を落とそうとしたら、もれなくこの人達も付いてくることになるぞ。


……それはそれで面白いな。



「剣持先輩はどうですか?」


『ケンちゃんは限界越えて気を失っています』



あ、そうですか……。

< 237 / 291 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop