亘さんは世渡り上手
「理人! どうだった……げっ」
「やぁ」
教室へ戻ると、谷口が俺のことを見た途端苦い顔をする。
俺にというか、俺の後ろに立つ三好先輩に。
どうして付いてきてるかって? 俺にもわからん。
ただ、さっきまで無理に付き合ってもらったわけだし、俺からは拒否できなかった。
「なんでこいつがいるの」
「あはは、僕一応先輩なんだけどなぁ」
「どーぞ自分の友達とお帰りください!」
「まぁまぁそんなこと言わず。ケン先輩は自分より強い人が好きらしいよ」
「ふ、ふーーーん。だから?」
谷口、情報に負けかけている。
とりあえず俺は帰り支度を済ませて、亘さんと一緒に教室を出ようとする。
「行こっか、亘さん」
「そうですね」
「ちょちょちょっとー! 置いていかないで!」
三好先輩に後ろ髪を引かれつつ、俺達を追いかけてくる谷口。
「あはは、谷口ちゃーん、もっとケン先輩のこと教えてあげようかー?」
「えっ……。あっ、い、いらない! バーカ!」
三好先輩、いくら谷口が扱いやすいやつだからって、からいすぎないでやってください。