亘さんは世渡り上手


ヒラヒラと舞う紙くず。


絶望の目を見せるソイツに、俺はさらに追い討ちをかけることにした。



「俺はアンタを一生許さないよ」



とりあえず、第一段階は終わりだ。


しっかりと自分の意思を告げて、反論させる余地を与えない。


とはいえ、反論する余裕なんてないようだ。


随分弱気になってしまっている。俺に傷を作った行動力は一体どこへ行ったんだ。


ほら、俺はこんなことを考える余裕すらあるっていうのに。



「……あはは。いいの、許してもらえるとは思ってないわ。どう見たって私はおかしかった。嫌われてもあたりまえ……」



そう呟くと、何かを察してハッとしたように皐月の方を振り向いた。



「あれ……? もしかして、皐月ちゃんが」



そうだ。これは全部、皐月が仕組んだこと。


皐月は冷ややかな瞳のまま、口を開く。



「……あなたをお母さんと呼びたいんです。でも、今のままじゃ叶わないんです」


「皐月ちゃん……」


「あなたは私のお母さんになってくれないですよね」


「そんなことないわ! 私、皐月ちゃんのお母さんになろうって頑張って……」


「理人くんを見て、どう思いましたか? できるなら戻りたいって、感じてませんか?」


「……っ! え、えっと……」



うろたえた言動は、図星をさされたのと同義だ。

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