亘さんは世渡り上手
外へ出ると、ガッポガッポと音が鳴り出しそうなくらいブカブカの靴を穿いた皐月は、何度も転びそうになっていた。
そうなることくらいわかっただろ。なんで自分の靴を穿かないんだよ。
「なにやってんだよ」
「だ、だって……! そんなすぐに会うなんて思わなかったから……っ!」
皐月の腕を取って支えてやる。
まぁ……それくらい高橋と会いたいってことなら、今すぐに会わせてやるけどさ。
スマホを取り出して通話をかけた。ひとつめのコールが終わる前に相手が出る。
『はい。終わりましたか、和泉くん』
「ああ。今からそっちに行く」
『――理人!? 皐月ちゃんといるって本当!?』
亘さんとの通話の横から、高橋のうるさい声が聞こえる。
俺は皐月の母親と会う条件として、きちんと高橋と話し合いをすることを約束していた。
皐月の反応からもわかるように、今日だとは言っていなかったけど。
亘さんに頼んで、高橋を近くの公園へ連れ出してもらっている。
俺は皐月に目を向けた。高橋の大きな声は、皐月にも届いていただろう。
「……先にちょっとだけ話す?」
「ううん」
皐月はすぐに首を振る。
「早く、会って話したいから」
「そ」
柔らかく笑う皐月は、どう見たって恋するそれだ。