亘さんは世渡り上手


何度も言うけど、亘さんといるのは危険だ。


いずれ全てを見透かされて、全てを吐露させられて、亘さんに全て知られてしまう。


それをあのメモ帳にでも書かれたらどうする。


それだけはダメだ。


しっかりしろ。何を揺らぎかけていたんだ。


確かに亘さんの隣は心地が良い。


何もかも許されているような感覚になる。


でもそれは嘘だ。幻影だ。


亘さんは何も知らないだけ。だから何も言わないだけ。


はっきりとした理由があって俺を見透かしているわけではない。たぶん、感覚的にわかるだけ。


……大丈夫、大丈夫だ。



「そうだ、亘さん教え方上手いし、今度はちゃんとあいつらもいれてテストの勉強しようよ」



嫌な顔して逃げそうだけど、とからから笑う。



「……そうですね」


「あと、俺は別に優しくなんてないよ。特に、こうやって可愛い女の子が隣にいるときなんかはね」



亘さんの肩にかかっていた黒髪を一束すくう。


少し手を緩めれば、パラパラと落ちていった。


もちろん、亘さんは無表情のまま。


つまんないやつ。



「……和泉くんは優しいですよ」


「いやー、意外とそうでもないかもよ?」


「いいえ。優しいです」



……?


なんでそんな頑ななんだ――



「えっ!?」



俺は驚いて席を立ってしまった。


いや、だって。


亘さんが。



――――亘さんの頬が、赤かったから。


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